2020年12月14日更新
デリバリー市場を主戦場にしたゴーストキッチンの仕組みと今後について
目次
ゴーストキッチンとは?
「ゴーストキッチン」とはデリバリーやピックアップメニュー専門のシェア型の厨房のことです。飲食店では通常お店の前に看板などで店舗名を書いたりもしますが、基本的にはお店の看板は出さずに複数のレストランが中に入っている場合があります。
またゴーストキッチンの料理提供を自社で料理人を雇って運営しているところもありますが、飲食店を出したいけどその資金がまだない料理人の方などにキッチンスペースを貸し出したりする場合もあります。もちろん自社で雇う場合と貸し出しとハイブリッド型での提供もあると思います。
アメリカでは、UberEats(ウーバーイーツ)やGrub Hub(グラブ・ハブ)、2020年12月10日に米国で上場したDoor Dash(ドア・ダッシュ)など、デリバリーサービス会社自体がゴーストキッチンを運営し、注文からデリバリまでを請け負っているケースも多いみたいです。
コロナ禍により注目されるデリバリーサービスとゴーストキッチン
コロナ禍によって、宴会や店舗内飲食の自粛が叫ばれる中で、国内では出前館やUberEatsなどのデリバリー系サービスが非常に注目されています。
デリバリーサービスとともに、ゴーストキッチンが注目される理由としては、まずはデリバリーを専門にするため、「ソーシャルディスタンス」が確保されている状態である為、顧客同士やスタッフと顧客の接触は配達時くらいで、最近では置配なども浸透してきているので、非接触を実現することが可能です。
また、通常の飲食店と違って、ホールでのサービスをする必要がないため、既存のデリバリーサービスを使えば、料理人一人でも最悪店舗を運営することができ、配送などはデリバリーサービスに任せれば固定比率が下がります。
さらに立地面でのアドバンテージがなくなるということ。通常イートイン型の店舗では、駅前だとか、駐車場が大きなロードサイドなど、立地が9割と言われるほど、どこにお店を出すかは重要な要素になってきますが、ゴーストキッチンであれば配送をするので、住宅街の一角等でも全く問題ないですし、逆にあまり家賃が高くないエリアでも出店できるので、こちらも固定費が減ることで運営しやすい店舗となります。
日本でもキッチンベースというシェアキッチンを提供するところも出てきています。
キッチンベース(https://kitchenbase.jp/about/)
ゴーストキッチンのコスト構造の考え方
ゴーストキッチンのコスト構造は、いわゆる一般的なフルサービス型の飲食店とはコスト構造は変わってきます。
上記は、一般的な飲食店と、ゴーストキッチンのコスト構造の違いです。大きく変わるのは人件費コストが大幅に減る事。これはホール従業員がいなくなることで、キッチン側の事件費のみになるため、人件費率が下がります。
またデリバリーサービスへ掲載することで、広告宣伝費を無くします。また店舗の立地も、デリバリー専門にすることで、人の集まりやすい繁華街やロードサイドなどではなくても、店舗運営ができるため家賃や、キッチンだけなので店舗の大きさも小さくて済むため減価償却などあらゆる初期投資コストを最小限に抑えることができます。そのため最終的な利益率も通常の店舗運営に比べ高くなる傾向があると言えます。
今後、海外のゴーストキッチン業態や、コロナ下でのデリバリーサービスの市場規模が伸長することで、配送手数料なども下がってくる可能性があり、今後期待できる業態であると言えるのではないでしょうか。
アメリカでは2020年に飲食店の50%が店舗外での売り上げになるという予測も
調査会社のデータによると、2020年アメリカのレストランの売り上げの半分以上が店内ではなく「店舗外(配達、ドライブスルー、テイクアウト)」によるものになると予測されているそうです。実際に、投資グループのCowen and Companyによると、店舗外消費による売り上げは今後5年間で業界の成長の80%を占めると推測されています。
アメリカのマクドナルドのCEOは2019年第3四半期の決算報告で「デリバリー市場が次の大きな収益源となる」と述べており、2019年にデリバリー部門による売上がグローバルで40億円を達成しています。これは2016年と比べわずか3年で300%の成長をしたことになります。
Uberの創業者であるトラビス・カラニック氏が現在取り組んでいるスタートアップには「クラウドキッチンズ」(https://www.cloudkitchens.com/)があり、ゴーストキッチンを運営したい経営者に、共同キッチンを貸し出すという、キッチンのシェアリングエコノミービジネスが始まっています。
日本でも5坪で7業態運営で月商500万円を実現する店舗も
実際に東京では、すでに5坪の敷地で7業態を運営しているその名も「ゴーストキッチンズ」では月商500万円の売上をたてています。こちらの記事(https://food-stadium.com/feature/27782/)では、平日2名、休日3名のキッチンスタッフのみで、先に述べた配送は既存のデリバリーサービスに委託して、集客もデリバリーサイト経由で、スタッフはお金のやり取りすらない為、料理を作ることに集中できる業態を創り出すことが出来ているようです。
今後、コロナ後のニューノーマルに向けて、今までにないゴーストキッチンのような業態を検討することで、事業ポートフォリオを分散させ、有事の際の影響を抑える組織運営を実現する為にも、今後の業態転換のひとつとして検討してみてはいかがでしょうか。
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