M&Sフードサービス株式会社

駅近立地と地域密着を軸に展開する定食チェーン「定食屋 宮本むなし」。 創業以来、“ご飯おかわり無料”というブランドの柱を貫き、地域の“胃袋を支える存在”として親しまれてきた。 M&Sフードサービス株式会社では、この価値を守りながら店舗オペレーションの効率化と顧客満足を両立させるため、セルフオーダーシステム「メニウくん」の導入に踏み切った。 導入の背景、成果、そして今後の展望を、取締役執行役員/事業部長の牧野茂知氏が語る。
ブランドの象徴「ご飯おかわり無料」
定食屋 宮本むなしの最大の特徴は、創業当時から続く“ご飯おかわり無料”のサービスだ。
物価や米価が上昇する中でも、「お腹いっぱい食べられる定食」を提供し続けている。
それは単なるサービスではなく、創業時から受け継がれてきたブランドの信念であり、変わらないアイデンティティだ。
出店戦略の軸は駅近立地。主な顧客層は単身男性で、地域の暮らしに溶け込む“日常の食卓”として愛されている。
一部店舗では24時間営業を行い、住宅地の夜間需要にも対応。 “地域の胃袋を支える”という言葉が自然と似合うブランドである。
看板メニューはチキン南蛮。店内で仕込むタルタルソースが人気の秘密で、外食でありながらどこか懐かしい“家庭の味”を感じさせる。
季節限定メニューや鶏料理など、訪れるたびに楽しめる工夫も欠かさない。
店内は和の温もりを基調とした落ち着いた空間で、ひとりでもゆっくりと食事を楽しめる雰囲気に整えられている。

券売機の混雑と機会損失をなくす
多彩な定食ラインアップは定食屋 宮本むなしの魅力の一つだが、豊富さゆえに券売機の前で迷うお客様が増えていた。
ピーク時には行列が絶えず、外から見れば賑わっているように見えるが、実際には「混んでいるからやめておこう」と入店を諦める人もいた。
見た目の混雑が、売上機会を静かに奪っていたのだ。
また、券売機ではトッピングやセット販売などの提案が難しく、客単価を上げる工夫にも限界があった。
せっかくお客様の満足を高めるアイデアがあっても、機械の画面では伝わりにくい。
そのもどかしさが、現場の課題になっていた。
さらにスタッフ側にも負担が大きかった。
食券の回収・確認・配膳を繰り返す中で動線が長くなり、ピーク時には提供スピードが低下。
ときには釣銭取り忘れなども発生し、現場の緊張感が増していた。
導入の決め手はテイクアウト時の「注文」と「会計」を分ける柔軟な仕組み
「メニウくん」を選んだ最大の理由は、テイクアウト時の会計を先に済ませなくても注文を完結できるという構造だった。
多くのセルフオーダーシステムは会計完了を注文確定の条件としており、結果として厨房処理が詰まり、オペレーションの流れを止めてしまう。
「メニウくん」はこの制約を解き放ち、注文と会計を分離。厨房と客席、双方に無理のないリズムを生み出した。
注文が途切れず流れる設計により、ピーク時でもスムーズな運営を実現し、さらに、東芝テックのPOSシステムと連携し、販売データの分析も可能になったことも大きなメリットといえる。
その影響で時間帯や季節ごとの売れ筋を正確に把握し、メニュー展開や人員配置に反映できる体制が整い、新しい店舗運営の形が生まれた。

5名から4名体制へ。効率と品質の両立
導入は2024年3月、新今宮店のリニューアルにあわせて実施された。
初期はスタッフやお客様に慣れが必要だったが、2か月も経たないうちに運用が定着した。
ゴールデンウィークを迎える頃には、現場から「もう以前のやり方には戻れない」という声が上がっていた。
これまで5名体制で回していた店舗が、4名でも同等のパフォーマンスを維持。
食券回収に費やしていた時間がゼロになり、スタッフは提供や片付けといった生産的な業務に集中できるようになり、一人あたりの生産性が上がった。
また動線の短縮は、作業効率だけでなく心理面にも好影響をもたらした。
「食券を取りに行かなければ」という焦りから解放され、落ち着いた接客ができるようになり、結果としてサービス品質の向上につながった。

顧客体験の変化:誰でも使いやすいUIによる自然なアップセル
お客様の体験も確実に変化した。
高齢者や訪日客でも迷わず操作できるシンプルなUI設計により、注文時のストレスが減少。
行列が減り、滞在時間が短くなったことで、回転率が自然と向上した。
さらに、トッピング提案やおすすめ表示といったUI上の工夫が客単価を底上げ。
改装前に比べ、売上・客数・客単価のすべてが上向く結果となった。
デザインとデータの両面から、顧客体験を磨き上げる取り組みが進んでいる。
定食屋 宮本むなし流の進化:”おかわり”に自由を。選べる選択体験へ
ブランドの象徴である“おかわり無料”という文化を守りながらも、多様なニーズに応える柔軟な仕組みを導入した。
タブレット上で「おかわり自由」か「おかわりなし」を選べるようにし、“おかわりなし”を選ぶと自動的に値引きが適用される。
“食べたい量を自分で選べる自由”を加えることで、食の細い層にも満足度の高い選択を提供できるようになった。
また、会計画面には口コミ投稿QRコードを設置し、SNSやレビューサイトへの導線を強化。
食後の満足をそのまま声として広げる仕組みが整った。
英語や中国語など多言語対応にも取り組み、訪日客の利用も増加している。

今後の展望:空席表示で広がる、ブランド体験の新たなかたち
今後は、店舗外ディスプレイを活用した空席情報の表示を順次検討していく予定だ。
外から店内の状況を確認できることで、入店判断のハードルを下げ、機会損失を防ぐ狙いがある。
特に2階や奥まった立地の店舗では、その効果が大きいと予想する。
また、テイクアウトやデリバリーとの連携を強化し、需要変動に対応できる柔軟な運営体制を整えていく。
同社が目指すのは、単なる効率化ではなく、“食体験の質を落とさない効率化”。
「ご飯おかわり無料×家庭の味」という体験価値を守りながら、ブランド全体のアップデートを進めていく構えだ。

担当者の声
“地域の胃袋を支える”という理念は、これからも変わらない。
ただ、その実現方法は時代に合わせて進化していく。
「メニウくん」は、その進化を支える頼もしいパートナーです。
― M&Sフードサービス株式会社 取締役執行役員/事業部長 牧野茂知 氏