株式会社リンガーハット様(東京)
長崎ちゃんぽん専門店『リンガーハット』を、全国650店展開する㈱リンガーハット。
すべて国産野菜を使用するなど、常に新しい取り組みで多くのファンを生んでいる。2013年からはオリジナルのちゃんぽんと皿うどんが作れるmyちゃんぽん、my皿うどんの提供を開始。ちゃんぽんのファストフード業態で、セルフオーダーシステム『メニウくん』を採用した狙いを聞いた。
㈱リンガーハット
新業態開発部 執行役員 山﨑繁樹氏(写真右)、経営管理グループ 情報システムチーム 係長 宮川英紀氏(同左)
長崎ちゃんぽん専門の『リンガーハット』が、2013年からスタートしたメニューが「myちゃんぽん」だ。これは5種のスープ、3種の麺、5種の追加具材から好きなものを選び、好みの味を組み立てられる自由度の高さを売りにした新メニューであり、神奈川・横浜港南台店を皮切りに長崎・長崎かじや町店、奈良・イトーヨーカドー奈良店、東京・葛飾新宿店で導入。2017年4月には宮崎に既存メニューとmyちゃんぽんを提供する、宮崎大塚店をオープンした。
「myちゃんぽんは、普通の長崎ちゃんぽんでは満足しなくなったお客さまのニーズの掘り起こしを狙ったメニューです。実際に導入店では25~30%のお客さまがmyちゃんぽんをオーダーしてくださり、評判も上々です」と山﨑繁樹氏は話す。
人件費率30%未満へ
『リンガーハット』は立地や入居施設に応じて、券売機の導入、前払い式のセルフサービス、後会計のフルサービスと3タイプの会計スタイルを採用。特に前払いのスタイルを採る商業施設内のフードコート店は営業効率がよく売上げも好調である一方で、スープや麺を自由に選ぶmyちゃんぽんではゆっくりメニューを選べないといった懸念も。そこで宮崎大塚店では、フードコートの営業効率のよさと、フルサービスのゆとりを両輪させたセミセルフスタイルを確立。オーダーシステムには『メニウくん』を採用した。
「myちゃんぽんを初めてオーダーする際、オーダーの仕方がわからない、後ろに人が並んでいるとオーダーを焦らされるという方も多いため、他の人を気にせずゆっくり選べるようにと『メニウくん』を導入したかたちです。またオーダー時点で行列ができてしまうことで生じていた機会ロスをなくすことにもつながると考えています」と宮川英紀氏。
お客さまは入店したら席案内を受け、卓上の『メニウくん』から料理をオーダー。呼び出しベルがなったら受け取り口で商品を受け取り、食後に食器類を返却、会計をするといった流れだ。
myちゃんぽん導入で客単価70円UP
また券売機導入店や先払い式のフードコート店では客単価が落ちる傾向にあるが、myちゃんぽん導入店は通常店よりも70円ほど客単価を伸ばしている。そこへ卓上に『メニウくん』を置き、常にメニューを閲覧できる状態にすることで追加オーダーを誘発。現状、既存店のデザートやドリンクの売上げ比率は2%にとどまるが、宮崎大塚店では4~5%までの引き上げを狙っている。
スタッフ教育時間の短縮に貢献
宮崎大塚店は『とんかつ濵かつ』を業態転換したロードサイド店。『とんかつ濵かつ』は客単価1200円台のフルサービス業態だが、『リンガーハット』は客単価700円内のため十分なサービスの提供が難しい。一方で『メニウくん』導入によって最低限の人材で営業できるといった副次的効果も発揮する。
「ホールスタッフを必要としないフードコート店のレイバーコストは、既存店ベースで25~28%。宮崎大塚店も同様の効率のよさを求めることで、30%を下回る数字で着地すると予想します」(山﨑氏)。
実際にスタッフは厨房がメインであり、ホールスタッフは席案内と会計を行なう1人体制を実現。またハンディを必要としないため、スタッフ教育時間の短縮にもつながる。
「スタッフの高齢化も進んでおり、高齢のスタッフがハンディの操作を覚えるのは大変です。そのためオーダーテイクをなくすことで、スタッフ採用の年齢も広くとれると考えています」と宮川氏は言う。
こうした地方都市からIT化を進め、将来的な人材不足にも対応、宮崎大塚店では売上げ目標として年商1億円を掲げている。