株式会社大戸屋ホールディングス

国内店舗311店舗(※1)(直営149店舗 FC162店舗)を展開する「大戸屋ごはん処」。
定食業界の中でも、全国屈指の知名度を誇るチェーンである。
同社は全店舗のPOSシステム刷新に伴い、セルフオーダーシステムの一斉入れ替えという大規模プロジェクトに踏み切った。
その際の最重要課題として掲げたのは、「現場のオペレーション負荷の軽減」。
特に、タブレット端末のトラブル対応がスタッフの大きな負担となっていた。
この課題をいかにして解決し、大規模なシステム移行を成功に導いたのか。
その鍵となったのが、セルフオーダーシステム「メニウくん」が持つ独自の機能と、ハードウェア開発にまで踏み込む開発会社ならではの柔軟な対応力だった。飲食業界のDXをリードする同社の選択の裏側に迫る。
※1:2025年10月末時点

家庭の味を外食で再現。店内調理と厳選した食材への徹底こだわり
大戸屋の最大の特徴は店内調理と厳選された食材であり、特定の保存料・着色料・香料・調味料(※2)は使用していない。
添加物に頼らず、仕込みから仕上げまで丁寧に手をかけることで、“家庭の味”を外食で再現しているのがブランドの原点だ。
看板メニューは「鶏と野菜の黒酢あん定食」。
さらに、炭火グリル機材を使って焼き上げるサバやほっけなどの焼き魚も根強い人気を誇る。
季節ごとに野菜を入れ替え、毎年定番化しつつある「鰹の梅はさみ揚げ」など、旬を取り入れたメニュー展開も魅力だ。
近年はYouTuberとのコラボによる“筋肉メニュー”も好評で、従来の健康志向に加えて高たんぱく需要にも応えている。
全メニューにカロリー・たんぱく質・脂質・エネルギー量を明記し、食事の栄養管理がしやすい点も支持を集める理由のひとつだ。
※2:不使用としている添加物は、大戸屋ホームページで公開中。
https://www.ootoya.com/menu_info/additives/

POSシステムのサポート終了がきっかけ。現場の運用負荷をいかに軽減するかが課題
今回のシステム刷新は、長年利用してきたPOSレジシステムのサポートが終了するタイミングが直接のきっかけであり、全店舗のシステムを刷新するにあたり、現場が抱える運用面の課題を解決することが大きなテーマであったという。
「以前のセルフオーダーシステムでは、タブレットが故障したり充電が切れたりした際の復旧作業が非常に煩雑でした。管理者モードにログインし、パスコードを入力して卓番を再設定、さらに再起動をかける…といった多くの手順が必要で、その間お客様をお待たせしてしまうこともありました。この『卓番変更』の手間が、現場スタッフにとって大きな負担となっていたのです。」と語るのは商品マーケティング本部マーケティング部の荒井桃香氏だ。
またメニウくん導入に当たって、インパクトミライ社と綿密な打ち合わせが必要だったという。

導入の決め手は現場の負担をなくす『スワップ機能』。開発会社ならではの柔軟な対応力も魅力
複数社のシステムを検討する中で、現場の課題を解決する機能として特に注目したのが、「スワップ機能」であった。
「メニウくんの最大の決め手は、このスワップ機能です。予備のタブレットを卓番情報が登録されている台座(クレードル)に置くだけで設定が完了する。
従来、数分かかっていた作業がわずか数秒で終わるこの機能は、現場の負担を劇的に軽減できると確信しました。
また、開発会社であるインパクトミライ様の、私達の要望に対して迅速かつ柔軟に改善・開発に取り組んでくださる姿勢も、パートナーとして非常に心強く感じました。」と千葉氏は語る。
システムを開発するだけではなく、きめ細やかなアフターフォローも導入の大きなポイントとなったことは間違いないだろう。
ハード・ソフト両面でのカスタマイズで、より快適な店舗環境を実現
導入後、現場のオペレーションは大幅に改善された。特に効果が大きかったのは、ハード・ソフト両面でのきめ細やかなカスタマイズ対応である。
「卓番変更の手間がなくなったことで、スタッフは接客など本来注力すべき業務に集中できるようになりました。また、当社の課題であった『テーブル上のスペースの狭さ』を相談したところ、タブレットの台座とメニューブック立てを一体化させた特注のクレードルを新たに開発していただきました。これにより、限られたスペースを有効活用できています。」
セルフオーダーのシステムだけではなく、それを設置するハードすら顧客に合わせて柔軟にカスタマイズできる点も大きく評価されたという。
また肝心のソフトウェア面では、自由度の高いメニューレイアウトが商品訴求に繋がっていると評価する。
「一般的なマス目状のレイアウトではなく、1ページに1商品を大きく表示できるフリーレイアウトを活用し、商品の魅力やこだわりの栄養成分表示などを、お客様に分かりやすく伝えられるようになりました。4カ国語対応のおかげで、増加している海外からのお客様にもスムーズにご注文いただけています。」
このような細かいリクエストに対応できるのも密着したサポートが可能な同社ならではの強みといえるだろう。

今後の展望:卓上決済やカメラ機能を活用し、顧客一人ひとりに合わせたサービス提供を目指す
今後の展望としては、タブレットに内蔵されているカメラを活用し、顧客が自身の席で会計を済ませられる「卓上決済」機能の導入を検討している。
回転率の向上と顧客の利便性の向上が狙いだ。
また検討段階ではあるが将来的には、カメラによる客層分析データと連携させ、顧客の属性に合わせたおすすめメニューを表示するなど、よりパーソナライズされた顧客体験の提供を目指していく考えだ。