グロービート・ジャパン株式会社

「嵐げんこつらあめん」を看板に、創業から30年以上にわたり全国のファンを魅了し続ける「らあめん花月嵐」。
毎月発売される期間限定ラーメンは多くの話題を呼び、「いつ来ても新しい発見がある」ラーメン界のエンターテイナーとして確固たる地位を築いている。
同社は2025年、新たな挑戦として銀座コリドー街にプレミアムコンセプトの新店舗をオープン。
従来の券売機システムから脱却し、新たな顧客体験を創出するための戦略的パートナーとして、セルフオーダーシステム「メニウくん」を初導入した。その背景と導入効果について、運営会社のグロービート・ジャパン株式会社、企画広報制作部部長の鈴木力様にお話を伺った。

創業33年の味に“新鮮さ”を重ねる。花月の強さを支える「二軸のメニュー構成」
1992年創業の「嵐げんこつらあめん」をはじめとした看板商品を軸に、多世代が楽しめるメニューを揃えてきた花月嵐。
醤油・味噌・塩の3種類を展開する豚骨らあめん、横浜家系の流れを汲む一杯、「黄金の味噌らあめん」、さらに創業当初からの汁なし系“もんじゃそば(現:まぜそば)”など、レギュラーメニューだけでも13品以上を展開する。
そこに、毎月更新される期間限定ラーメンが加わる。
タレントや飲食店とのコラボ、ご当地ラーメン企画など、まるで「来るたびに新しいショーがあるディズニーランドのように、毎月新鮮な驚きを提供したい」(鈴木氏)という思いで続けてきた柱だ。
またファミリー向け店舗では小上がり席や明るい内装を整備し、学生時代からのファンが大人になっても家族で訪れやすい環境をつくってきた。
お子様ラーメンには“次回無料”クーポンを必ず付けるなど、長期的なファンづくりも徹底している。

新業態のコンセプトは「滞在時間の向上」。券売機では顧客体験を損なう懸念があった
グロービート・ジャパン株式会社は2025年5月に「らあめん花月嵐Premium 銀座コリドー店」として、従来のロードサイド店舗とは一線を画し、ビジネス層やインバウンド観光客がゆっくりと食事やお酒を楽しめるプレミアムな空間としてオープンさせた。
この新しい店舗コンセプトを実現する上で、従来の「券売機」システムが大きな課題になると考えていた。
「銀座という土地柄、お客様の滞在時間が長くなり、グループでのご利用やお酒と共にメニューをじっくり吟味したいというニーズが高まると考えました。その際、私達が長年採用してきた券売機には、注文時に後ろに並んでいるお客様からのプレッシャーを感じさせてしまうという大きな弱点がありました。お客様にご自身のタイミングでゆっくりとメニューを選んでいただくためには、卓上オーダーシステムの導入が不可欠だと判断したのです。」
スピードと効率を重視する券売機は、滞在時間を価値とする新業態のコンセプトとは相容れない。追加注文のたびに席を立つ不便さも、プレミアムな体験を損なう要因となるため、顧客一人ひとりのペースに合わせたオーダー体験の提供が求められていた。

決め手となった圧倒的なカスタマイズ性能。紙のメニューをデジタルで完全再現できる唯一の選択肢
卓上オーダーシステムの導入を決定し、複数社の製品を比較検討する中で、最終的に「メニウくん」を選んだ決め手は、その圧倒的な性能と柔軟なカスタマイズ性にあった。
「一番はその性能の高さです。他社様のシステムには機能制限が多く、『あれができない、これができない』という制約がありました。私達は、お客様の見やすさ・使いやすさを第一に考え、卓上のメニュー表やPOPのデザインに非常にこだわっています。その紙媒体で表現している世界観を、そのままデジタルの世界で再現したいという強い想いがあり、私達のわがままな要求に応えてくれたのが『メニウくん』でした。結果的に、他には選択肢が残らなかったというのが事実です。」
機能が固定されたパッケージ製品では、同社が毎月展開する多彩な期間限定ラーメンや、豊富なトッピング、麺の種類の選択といった複雑な商品構成を、魅力的かつ分かりやすく伝えることができない。自社のクリエイティブを最大限に活かせる、自由度の高いプラットフォームであることが選定の絶対条件であった。

客単価は大幅アップ、ホールは1.5名分の省人化。スタッフの習熟度に依らない均一なサービスも実現
導入後、銀座コリドー店は当初の狙い通り、客単価の大幅な向上とオペレーションの効率化を同時に達成している。
「二次注文、三次注文がお客様のタイミングで次々と入ってくるため、客単価は既存店に比べてかなり高くなっています。また、オーダーテイク業務がなくなったことで、同規模の店舗と比較してホールスタッフを1〜1.5名削減できています。これまでであればベテランスタッフが口頭で行っていた麺の種類の確認(細麺・中太麺)や、おすすめトッピングの提案なども、システムが毎回確実に行ってくれるため、スタッフの習熟度に依らず、質の高いサービスを均一に提供できるようになりました。」
特に、多くを占めるインバウンド観光客も、多言語対応のタブレットで迷うことなく注文を完了しており、顧客満足度の向上を実感しているという。研修いらずの直感的なUIは、スタッフにとっても分かりやすく、スムーズな店舗運営に貢献している。
パーソナライズされたレコメンド機能で、更なる顧客体験の向上を目指す
今後の展望として、個々のお客様に最適化されたメニュー提案(レコメンド)機能に期待を寄せている。
「豊富なメニューがあるがゆえに、お客様が選択に迷ってしまう側面もあります。今後は、お客様の属性や過去の注文履歴などを読み取り、そのお客様にとってのベストな組み合わせを提案できるような機能があれば、使い勝手はさらに一段、二段と向上するでしょう。お客様が意識することなく、トップ画面がその人向けに変わっている、といった体験が提供できれば非常に面白いですね。」
今回の導入は、銀座という新たなステージへの挑戦を成功に導くための戦略的な一手であった。今後はこの成功事例を他店舗へ展開することも視野に入れながら、テクノロジーを活用した「新しいラーメン店の楽しみ方」を追求していく。

事業戦略と完全に連動した、攻めのITシステム投資
らあめん花月嵐の今回の事例は、守りのコスト削減や効率化のためだけでなく、「新しい顧客体験を創造する」という明確な事業戦略を実現するための、攻めのITシステム投資であった点が特徴的だ。
「プレミアムな空間で、ゆっくり食事を楽しんでほしい」という店舗コンセプトの実現には、券売機という長年の成功体験からの脱却が不可欠だった。そして、その代替策として、自社の強みであるクリエイティブなメニュー表現を一切妥協せずに実現できる、極めて柔軟なプラットフォームを選定した。
結果として、客単価向上と省人化という経営的成果はもちろんのこと、スタッフのスキルに依存しない均一なサービス品質の提供、インバウンド顧客へのスムーズな対応といった、多面的な価値を生み出すことに成功している。テクノロジーを事業戦略実現のための強力な武器として活用した本事例は、多くの飲食企業にとって示唆に富むものと言えるだろう。